みんぱくをめぐる冒険

みんぱくをめぐる冒険

1.冒険の始まり
2.地域展示
3.見える世界
4.見えない世界
5.現代の人々
6.通文化展示
7.民族学
8.冒険の終わり
見学メモ
参考文献
全て見る

1.冒険の始まり

1.ボク

ボクは旅や冒険が嫌いだ。

それなのにボクはこうして
自分の探検旅行のことを語ろうとしている。

主人とはぐれた日のことだ。

2.博物館

そこは
日本という国にある
民族学博物館という
文化人類学、民族学の
研究活動と成果を
展示する場所らしい。

そこには遠い遠い昔から
現代のモノまで展示してある。

たいくつで
あくびの練習にもならないけど
主人を探すついでに
ちょっと見学してみることにした。

3.これは何?

こんなガラクタたちを飾って、いったい人間たちは何を学ぶというのだろう。

ガラクタとは失礼しちゃうな〜。

4.みんぱくの精

だ、誰だい君は?

ここで生まれた精霊とでもいっておきましょう。

5.収蔵品

ここに展示しているのは世界から収集された28万点のうちのごく一部。それでも十分、世界には色々な民族や文化があることが学べるようになっているんだよ。

6.地域文化展示・通文化展示

館内の展示は、地域展示と通文化展示があるんだ。

7.世界地図

地域展示は、オセアニアから世界を一周し、最後に日本にたどり着く構成で展示されているんだ。では館内展示を詳しく見てみよう。

8.冒険の始まり

…ということで
彼に案内してもらいながら主人を探すことになった。

9.オセアニア

10.アメリカ

11.ヨーロッパ

12.アフリカ

13.西アジア

14.南アジア

15.東南アジア

16.東アジア(朝鮮半島の文化)

17.東アジア(中国地域の文化)

18.中央・北アジア

19.東アジア(アイヌの文化)

20.東アジア(日本の文化)

21.

確かに、なじみのない文化であったとしても、生活が中心に展示してあると違いがわかりやすいのかな。

そうだよ。人間たちの生き方の豊かな多様性がわかると思うよ。

22.

人間の世界にも興味が出たところで、では、ちょっと具体的に見てみるかね。

3.見える世界

23.食べるモノ

人間たちは、昔は君たち猫族のように獲物を追っていたのに、いつからか自分たちで食べ物を育てたり、作ったりするようになったんだ。

ん、もしかして、人類の歴史では食べ物を作っていた時間より獲物を追いかけていた時間の方が長いのかな?

24.使うモノ(生業)

稲や麦や豆等々、人間は自分たちの命を繋ぐ食べモノを手にいれるために、色々な工夫をしているんだ。

その道具は、地域や民族が違っても、なんとなく似ているんだね。

25.着るモノ

衣服というモノは、地域や民族によっての違いが特徴的だよ。

気候風土と心が、着るモノを決めるのかな。そもそも、どうして人間は毛をやめたのだろう。

26.住むトコロ

住居もまた、地域や民族による違いが特徴的だね。

だいたいのボクたち動物てのは、食べる、寝る、子育て、天敵から身を守る為に巣作りをする。人間たちの住居はどうなのだろう。色々な工夫があるみたいだね。

27.移動するモノ

人間たちは昔から星や海図を頼って、海を挟んで陸から陸へとわたったり、時には流され辿りついて、気に入ったら住み着いていたみたいだよ。

人間たちには丘だけでなく海まで縄張りがあるんでしょ。少なくとも猫にはないぞ。

星座 ( 関連: 国立天文台・見学記 )

28.交換するモノ

昔は石や貝殻、今は貨幣を使って、ほしいモノと交換する。その貨幣は労働と交換して手に入れる。人間たちは生きるために色々な交換方法を考え、工夫してきたんだよ。

人間たちは、あんな金属や紙を信じて交換しているのだね。はー、便利なような、けんかの原因のような。

そうなんだ。お金なんてものができたから、それをいっぱい持つ人が出てきて、金持ちと貧しい人が出てきたんだ。 世界には狩りと採集で暮らしている人がいて、彼らはお金なんてものをもたないから、戦争もしないんだよ。

4.見えない世界

29.精霊 (神を対象としない宗教行為)

人間たちは欲張りだから、目に見えるものだけでなくて、目に見えないものも作ってきたんだ。

人間は昔から、ボクたち猫族をはじめとする動物たちでもない、不思議な生き物たちと共生しているんだね。

うん、そうなんだ。人間は、世界には目に見えないものがたくさんいて、それが世界を動かしていると思ってきたんだね。

30.

目に見えないものを、目に見えるように形であらわそうとしたから、ずいぶんと苦労したんだね。

仮面や像がたくさんあって、ずいぶんびっくりさせるような姿をしているだろう。かくいう小生もそのひとりであーる。

31.お墓

それから人間たちは、死ぬと、つまり見えない存在になると、墓というものに入りたがる。

我々猫族は人知れず、否、猫知れずこっそり見つからないように死ぬけどなあ。最近はまあ、墓に入る奴もいるけど、迷惑だね、僕ぁ。

32.宗教

人間たちは、目に見えない世界を宗教と呼んできたんだ。最初は各集団が違った宗教をもっていたんだけど、 今から2000年ほど前に、シャカという人が仏教を作ったり、イエスという人がキリスト教を作って、それらが今では世界中に広まってるんだ。

仏教は、神さまじゃなく、仏さまなんだね。偉いフリをしたり見守られてるってのも息苦しくて、僕には神様は務まらないなぁ。勝手気ままは猫の特権。

33.祭りと儀礼

祭りって、祈ったり、謝ったり、お礼したり、敬ったりと、やることがいっぱいあって大変だね。そんなにけじめをつけないといけないのかねぇ...。

そもそもの始まりは、豊作を願ったりその感謝だったらしいけどね。 でも、人間が集まって都市ができると、今度は疫病や食中毒がおきないように、違う種類の祭りができたんだよ。いつの時代にも人間たちは難題を抱えているのだよ。

ふーん。人間であるってのは、大変なんだね。

5.現代の人々

34.民族同士の紛争が続いている

おたがいの歴史や宗教や政治や経済がぶつかって、今も各地で、民族のあいだで紛争が起きてるんだ。

とどのつまり、僕たちも縄張りやご飯で喧嘩することがあるけど、すぐ喧嘩は終わるよ。人間はそれをずっと続けるんだね。自分たちの違いを理解して歩みよれないのかな。

35.移民が世界中で増えている

紛争や経済問題等の理由で移民が増えている。だけど、それぞれの移り先にも事情があって、対立が生まれているんだ。

僕ら猫族も、自分の縄張りに違う猫が入ってくると、追い出そうとするけどね。 人間はもうちょっと賢くて、違う人たちと共存しているのかと思ってたけど、僕らとあんまり変わらないんだね。でも、それでいいのかなぁ。

36.民族をこえて

だけど人間たちは、対立するばかりじゃない。焼き肉やステーキを食べなかった昔の日本人が食べるようになったり、 世界中の人たちが寿司を食べるようになったり、民族を越えて色々な文化がまじりあっているよ。

6.通文化展示

37.通文化展示/音楽展示

人間たちは楽器という道具を使ってキーキープープー音を立てているが、猫族にはそれがさっぱりわからない。 だけどどうも人間たちはそれで理解しあっているようだ。その音の中にはたくさんの意思や感情が詰まっているらしいね。

そうだね。それから、音や音楽、楽器を通じて、神仏や精霊などの「見ることのできない存在」と交わってきたんだよ。

38.通文化展示/言語展示(言葉)

我々猫族にも言葉があるけども、まー人間たちは言語が多いし複雑だ。ひとつじゃダメなのかな。

言語が違うと、独自の民族としてカウントするんだよ。

だいたい何をそんなに話すことがあるのかな。 おはよう、こんにちは、いいお天気ですね、おやすみなさい…。お腹が空いたくらいでよくない?

39.通文化展示/言語展示(文字)

人間たちは粘土や紐や紙や竹などに、様々なごにょごにょとした形の文字というものを使って、言葉を記録しているようだけど、そもそも人間はなぜ言葉を残すのか?忘れちゃいけないのかなぁ。

さあ。少なくともことばは、人間たちにとって、感情や知識など膨大な情報を空間や世代を超えて伝達できる、かけがえのない資産であることはまちがいないよ。

7.民族学

40.民族学

人間世界も猫族以上にたいへんだってことはわかったけど、そもそも民族や民族学って何だろう?

人間の集団はそれぞれ言葉や宗教が違っているので、民族というんだ。世界には、7000とか8000とか民族があると言われているよ。

そんなにあるんだ!でも、言葉や宗教が違うと、おたがいに理解するのが大変だろうね。

41.

そうなんだ。世界中にある戦争や紛争の多くは、相手を理解しないことから起こっているんだ。 だから、違う宗教や言葉をもつ人を理解するのが大事になる。民族学というのは、それをめざした学問なんだよ。

それで民族が互いにもっとわかり合うようになれば、戦争や紛争が減るだろうし、それが 最終目標なのかな。

おや、あれは君の主人じゃないのかな?

あ、本当だ!

6.冒険の終わり

42.冒険の終わり

世界は人間なしに始まったし
人間なしに終わるだろう

民族学者 / 文化人類学者 : C・レヴィストロース 
(悲しき熱帯.2 P425 より引用 )

・・・ともあれ、ボクは存在するよ。

やれやれ。

43.

人間てのは大変だね。

ぼくたちみたいに自由に生きていれば
あくせく働く必要もないし
たまにはちょっと喧嘩をすることはあっても

戦争なんてのはないんだけどね。

見学メモ

ブリコラージュ
ありあわせの材料、道具を使ってモノを作ること。文化人類学者・レヴィ=ストロースが「野生の思考」をブリコラージュによるものづくりに例えたのが有名。

ジョージブラウンコレクション
宣教師であり神学者であるジョージブラウンが独自で収集した民族資料のコレクション。英国ニューキャッスル大学からみんぱくが購入。 https://www.r.minpaku.ac.jp/GBC/jpn/index.html

★鳥
「鳥」は色々な民族において、多くの象徴(神と人間をむすぶもの等)、隠喩として機能しています。門や墓、彫刻など、みんぱく内の展示物を見ていても、たくさん見受けられます。

★仮面
基本的には仮面は儀礼で使われていましたが、そののち形骸化し芸能へと変化しているものもあるよう。

★儀礼
儀礼はたいてい精霊・祖霊との対話を指すそう。

引用/参考文献

参考文献

★取材協力

★参考文献/引用

  • 悲しき熱帯 (レヴィ=ストロース)
  • 構造・神話・労働 (レヴィ=ストロース)
  • 現代思想の冒険者たち20 レヴィ=ストロース (渡辺公三)
  • レヴィ=ストロース入門 (小田亮)
  • 松岡正剛の千夜千冊 レヴィ=ストロース・悲しき熱帯 (WEB)
  • 国立民族学博物館展示ガイド
  • 民博早わかり(梅棹忠夫)
  • 梅棹忠夫知的先覚者の軌跡 (国立民族学博物館)
  • 梅棹忠夫のことば (小長谷有紀)
  • 梅棹忠夫語る (聞き手・小山修三)
  • ウィキペディア

★写真:佐藤浩司

★シナリオ協力:竹沢尚一郎

★サイト制作:ムラギしマナヴ

arrow-up

(C) 総研大デジタルミュージアム 2016 / 無断転載禁止